東大入試をあきらめた人工知能

塾通信10月号より

東大入試を突破することを目標に、
2011年から国立情報学研究所が開発を進めてきた人工知能「東ロボくん」を知っていますか。
センター試験模試の5教科で総合偏差値57.1(中学生の偏差値に換算すれば、64~68)と
なかなかの成績を出しましたが、このままでは東大受験突破は無理と判断、
プロジェクトは一旦凍結されました。
断念の原因は、文章読解力だといわれています。

一年前の記事ですが、インタ―ネットに「東ロボくん」が偏差値57で東大受験を諦めた理由
(「東ロボくん」 で検索 ダイヤモンドオンライン http://diamond.jp/articles/-/142479)
に紹介されています。それによりますと、
計算処理能力は人間をはるかに上回るAIの弱点は次のような点です。

苦手なものは、ストーリー性があったり、
因果関係のある複数の文を読んで文脈を理解したうえで、解答する問題だ。

 実際の問題文ではないが、
「A.彼は報告書をまた出し忘れた」
「B.おまけに会議に遅刻した」という文章のあとに、
続く文として以下3つの選択肢があるとしよう。

(1)私は寝坊した。
(2)会議には報告書が必要だ。
(3)彼は社会人として自覚がない。

東ロボくんは、A、Bと同じ単語が入っている(2)や、
遅刻という単語と同じ文章に入っている確率が高い「寝坊」が含まれる(1)を選んでしまう。

文脈を理解できず、自分のデータにある単語の組み合わせの頻度から推定して答えてしまうためだ。

また、こんな面白い間違いも指摘されています。

中国三国時代の問題。東ロボくんが学習した用語集には
「魏(ぎ)王、曹操(そうそう)の子・曹丕(そうひ)」という記述があった。
 しかし、「魏の初代皇帝となった曹丕の父は誰か」
と問われると、東ロボくんは親子関係を理解しているわけではないので、
データベースとしては情報を持っているのに、正答できなかったのだ。

このプロジェクトのリーダー新井教授は、約5年間にわたる「東ロボくん」プロジェクトを経て、
「読解力のないAIが人間の知能を凌駕することはない」と結論づけていますが、
だからと言って安心することはできません。
それでも福高に合格できる実力はありそうですから。

新井教授は、「東ロボくんの開発を進める一方で、
中高生の文章の読解力がAIよりも劣っているという研究結果も出ており、
意味の読解は人間が圧倒的に優位などとあぐらをかいていられない。」
とも指摘しています。

学力軽視の風潮が進み、今まで以上に人間の国語力が弱まり、
AI以下の読解力しかなくなったとしたら、
計算力や記憶力では人間よりはるかにまさるAIが人間を支配してしまうかも知れません。
「意味の理解」の重要さを教えてくれる話題です。

高校野球の指導者から学ぶ②

塾通信9月号より

荒れた学校から甲子園 下関国際高校 坂原監督

創部52年で初の甲子園。坂原さんが監督に就任する前に部員の集団万引が発覚、
山口大会の抽選会直前で出場停止処分になるなどの状態だった野球部を立て直した。

荒れ放題だった野球部を甲子園に
「僕が来た当初は荒れ放題でした。突然、厳しい監督が来たとなって、
(部員が)みんな辞めて最後は1人になりました。
その後、3人戻ってきて4人になった。
グラウンド整備や道具の扱いが、とにかくヒドかった。
野球がうまい下手のレベルじゃない。そういうマナーを教えると、
面倒くさがって辞めていくんです」

野球と勉学の両立は無理
「それは無理です。『一流』というのは『一つの流れ』。
例えば野球ひとつに集中してやるということ。
文武両道って響きはいいですけど、絶対逃げてますからね。
東大を目指す子が2時間の勉強で受かるのか。
10時間勉強しても足りないのに」

「勉強しているときは『いや、僕野球やってますから』となるし、
野球やっていたら『勉強が……』となる。
“練習2時間で甲子園”って。2時間って試合時間より短い。
長くやればいいってことではないけど、うちは1日1000本バットを振っている。
1001本目で何か掴むかもしれない。なのに、時間で区切ってしまったら……。

野球って自力のスポーツで、サッカーやバスケみたいな時間のスポーツじゃない。
100点取ろうが、3アウト取らないと終わらない。
2時間練習して終わりじゃあ、掴めるわけがないんです。

スポーツ庁が(部活動の休養日や時間の制度化を検討し)
練習を何時間以内にしようと言っているでしょ?

あんなんやられたら、うちみたいな学校は、もう甲子園に出られない」

それぞれの言葉に、指導者として考えさせられるものがあります。
一面、正反対の考え方のようですが、
実は、いずれも担当する生徒たちの実状にあった方法なのだろうと思います。
はっきり共通しているのは、礼儀や他者への態度といった基本マナーは、
野球をする上で大前提ということ。

勉強でもそうなんだと思います。

高校野球の指導者から学ぶ①

塾通信9月号より

進学校から甲子園 東筑高校 青野監督

東筑高校は今春、現役で161人が国立大に合格した北九州市折尾にある進学校。
1日平均2~3時間の練習で、激戦区の福岡を勝ち抜いた。
指揮を執るのは東筑OBで、体育科教諭の青野浩彦監督(57)。
選手として78年夏、指揮官として96年夏の甲子園を経験した。

1日2~3時間しか練習しない。
「うちは『勉強重視』というより『勉強の学校』ですからね。
今は『完全下校』というのがあって、20時までには学校を出て帰りなさいというルールが、
ここ6年くらいの間にできたのです。」

野球部は人間力を育てるところではない。
「放っておいた方が自主性を与えられる。でも、放任じゃない。
自由を与えてるけど、行動は見ているので。
野球よりも生活態度や学校での態度を小耳に挟んで怒ることの方が多い。
『野球(部)は人間力を育てるところ』なんて言うけど違う。

悪さをしないために野球をやってるみたいな学校もあるでしょう。
でも、野球に縛られたものが外れたら結局ダメになりますよ。
ある他校の私立で、謹慎になった学校の先生が
『曲がった竹を真っすぐな竹に縛り付けて一生懸命に真っすぐにしようと思っても絶対に無理』
と言っていたのを覚えています。
素行が悪くても野球がうまいから、といって取るのはダメという話ですよね。
挨拶して舌を出してる子がいたり、
監督がいなくなってタガが外れる子もいるかもしれない」

当方の感想は②の後に書いています。

何かを成し遂げたければ、

塾通信8月号より

If it is to be, it is up to me.

何かを成し遂げたければ、
自分でやるしかない。(ジャーメイン・シャン)

NHKで、「奇跡のレッスン」というドキュメンタリー番組があります。
その中で、陸上100メートル走の「最強コーチ」として紹介されたジャーメイン・シャンさん。
あのウサイン・ボルトが所属するジャマイカの陸上クラブのコーチです。
番組では、彼が日本の中学生たちに一週間の特別指導する様子が紹介されました。

シャンさんは、走りのトレーニングのコツなど指導に加えて、
メンタル面で積極的になることを強調していました。
ジャマイカの子供たちに比べて、日本の子供たちは、「競争心」が足りないと、
上の言葉と、次のような話をしてくれました。

「何かを成し遂げたいと思ったら、成し遂げるのは他でもない君なんだよ。
そのために何をすべきか自分で考えて練習に取り組むんだよ。
人に任せていたら成長できない。すべては自分次第なんだ。」

「自分に自信を持ってほしい。やるべきことに集中して欲しい。
これは、挑戦することを恐れなくする魔法の言葉なんです。」

子供たちのやる気と能力を引き出す仕事という意味では、
勉強もスポーツに通じる点があります。大変共感を覚えました。

奇跡のレッスン「細部を“意識”すれば走りが変わる 陸上100m」より